業界の要望による受注製作品

従来のサーキットテスターによる測定では、ショートモード以外の故障に対しては正確に状況を把握することができません。バッテリーはその構造上、極板が少しでも生きていれば2Vを発生します。ショートモードの故障は2%程度しかなく、通常のテスターではこの約2%しか故障の判定ができません。つまり、陽極・陰極の脱落や剥離といった物理的故障を呈したバッテリーや、一般的劣化の90%を占める結晶性サルフェーションによる容量低下など、メンテナンスに必要な本当のバッテリーの状態を、従来のテスターでは検出できません。
「バッテリーチェッカーDC-60B」は、特別な操作知識を必要とせずに、これらの故障モードを簡単に100%判定します。DC-60Bで得たデータは、バッテリーの現状をありのままに表現した信頼性の高いデータとして管理することが可能です。


一般のサーキットテスターとは違う

市販されているテスター(サーキットテスター)は、できるだけ測定対象物の電力を使用しないようにするために、非常に大きい抵抗が直列に組み込まれています。これにより測定感度を最大限まで高めています。通常のメーターを振らせるタイプは、0.0001A(100マイクロアンペア)程度で目盛りがフルスケールになるものが多く、当社が計測部として採用しているデジタルテスターは、内部抵抗が100MΩあるので、2Vを測定したとしても0.0000002A(0.2ピコアンペア)の極微細電流で十分となるように設計されています。本来、測定するための電力を消費しないということは、測定対象物に影響を与える程度が少なくなるということを意味しますから、これはテスターの性能としては良いのです。が、このことが逆にバッテリーの性能判断に向かない理由にもなっています。


バッテリーの故障は、ほとんどがサルフェーションによる起電不良です

バッテリーの故障といえば、少し前まではほとんどが「陽極の故障だ」と判断されていました。今でもそのように即断する人が多いですが、実はこれは間違いです。最近の調査研究によると、完全に不良と判断されるバッテリー不良のうち、陽極故障が3%、陰極故障が5%、ショートによる故障が2%、そして残りの90%が結晶性サルフェーションがもたらす内部抵抗による発電不良だというデータがあります。極板が壊れるというよりも、極板環境が不良になって、十分な起電が行われない状態を「故障」として扱っている場合がほとんどなのです。

従来のテスターによる測定で判断できる不良バッテリーは、ショートによる不良、すなわち全体の故障症状のわずか2%しか把握できません。劣化しているだけで故障に至っていないものは判断できません。つまり、「このバッテリーは寿命末期だな」とか、「このバッテリーはまだまだ大丈夫だな」という判断ができず、生きているか死んでいるかしかわかりません。疑わしきバッテリー群を測定しても、確実に不良と判断できる確率が2%しかない。テスターで測定することがいかに無駄な時間を浪費するかおわかりいただけると思います。もっとも、これらの事実は、実際に測定している人にはよく理解されていることです。

DC-60Bは、一般に「負荷を喰わせる」と表現している方法で測定します。これは電池の内部抵抗を考慮しながら測定する方法であり、これにより全てのバッテリーの故障の有無を判断することができます。また、工夫次第では劣化の程度も測定することができます。

※DC-60Bは2V専用のため、その他の電圧のものには使用できません。フォークリフトの場合は、機種により12個/24個/36個全て測定することで全てのバッテリーの状態を把握します。もちろん新品においても同様で、初期不良の指摘も十分可能です。


DC-60Bの測定原理と「内部抵抗」

従来のサーキットテスター(一般にテスターと言われているもの)は、被測定物の電力をできるだけ使用しないように非常に大きい抵抗が直列に入っています。できるだけ少量の電流で電圧を測定できるこの工夫は、入力インピーダンスなどと表示されている値で示されます。この値がテスターの性能をそのまま表しているともいえます。ところが、これが大問題なのです。

直列に入っている抵抗値と実際の鉛バッテリーの内部抵抗は、10万分の1レベルの非常に大きな差があります。したがって、サルフェーション生成による内部抵抗の増加程度の微々たる数値上昇は一切無視されてしまうので測定できません。最大測定桁数はせいぜい4桁程度であり、10万レベルの単位と1や10程度の数値を同時に表示することは不可能です。並のテスターに、そのような精度を期待するのはそもそもが無茶な話です。

従来のテスターでの測定は、単なるショートモードによる故障程度しか発見できません。その故障検出率はわずかに2%。これは、100個の故障バッテリーの内2個程度の確率です。日常的に作業を行っている方なら、「テスターで測っただけでは実態は把握できない」と考えているはずです。その結果、不良か良かの判断に時間をかけてしまうことになり、「不良判定は熟練した者のみの仕事」となってしまうのが普通です。しかしこれは非科学的であり、例え熟達していようとも、正確な判断は理論的に無理です。ましてや微細な劣化程度などは把握できようはずがありません。

例えば、バッテリーの陰極・陽極が割れてしまい、それぞれ10円玉くらいの面積しかなくなったとします。こんなひどい状態でも、ショートさえしていなければバッテリーの端子には2Vが発生します。従来のテスターでこれを測定すると、「2V」という測定結果が得られます。極板が割れているようなバッテリーなのに、2V発生=異常なし?となるのです。

DC-60Bなら、限りなく「0V」と測定します。すなわち「不良」という判断ができるようになるのです。この差は甚大です。

では、従来のテスターでは測定できない内部抵抗値を検出するには、どういった工夫が必要となるのか。
DC-60Bの原理について説明します。

電池は、放電していると時間とともに端子電圧が低くなってきます。
理由は簡単です。内部抵抗が大きくなって内部での電圧降下が大きくなり、一定の電圧を取り出せなくなるからです。電池がどの程度疲弊しているのか。それは内部抵抗を把握することでわかります。※電池を1個として考えます。

【例】 何も抵抗をつけていない状態の電池の端子電圧が2.13Vあった。ここに負荷抵抗(R)を接続したところ、電流は60A流れた。負荷抵抗(R)を接続したときの端子電圧は1.93Vであった。

端子電圧の変化に注目してください。
負荷抵抗を接続する前と後では、2.13V-1.93V= 0.2Vだけ差が生じています。
この0.2Vの差が、内部抵抗が作用したことによる電圧降下です。
その抵抗(内部抵抗)は r = (2.13V-1.93V)/60A で求まります。
したがって、内部抵抗値(r)は0.00333Ωということになります。
また、この時の負荷抵抗(例えば走行モーターなど)は R=1.93V/60A です。
したがって、負荷抵抗値(R)は0.0321Ωということになります。

問題はこの「非常に小さな値である内部抵抗をどのように測定するか」です。
通常のテスター(ラインテスタ−)には、コンマ以下の微々たる抵抗値を測定できません。測りたくても測れないくらいに小さい内部抵抗値をどう計測するのか。これが問題となっていました。

当社は、内部抵抗そのものを測定することが難しいなら、負荷抵抗の両端の電圧だけを測定して、そこから算出するという方法が最も簡明な解決法ではないかと考えました。これなら、負荷抵抗の値から逆算して、内部抵抗の値を算出することが可能なはずです。

良好な時には、2.13Vある端子電圧も、電池能力の末期では1.7V程度になるといわれています。0.43Vもの差が表れます。通常のテスターは、1/100まで表示します。このように大きな値なら簡単に測定できるので、DC−60Bの表示部には市販のテスターを用いています。元々このテスターの分解能は0.001Vオーダーのものですが、これではあまりにも細かいので0.01Vオーダーで使用して十分ゆとりのある測定値となります。0.01Vの分解能がありますから0.43Vの電圧を測定することは簡単であることがおわかりいただけると思います。

一般的な電池式フォークリフトバッテリーは電池セル1個が2Vで、これが24個で1ユニットとなっているものが多いようです。ゆえに、2V×24=48Vで約48Vでの使用となりますが、このような場合は、単セル1個づつの測定ですから、単セルの数値に24個分を乗じてやれば全体の内部抵抗、電圧がわかります。通常は電圧のバラツキとして比較することにより、簡単に劣化の程度を判断することができます。


計測データの管理と読み取り

実際にどのようにしてデータを管理し、取得した数値をどのように読み取ればよいのかを簡単に示します。





上図のような方法で得られた数値を見て、その数値のバラツキでバッテリーの状態を判断します

以下に実際に計測して得られた例を示します。
48Vのバッテリーフォークリフトです。

1.35 1.47 1.46 1.34 1.23 1.28
1.37 1.30 1.50 1.14 1.27 1.42
1.34 1.54 1.44 1.32 1.47 1.26
1.34 1.15 1.33 1.12 0.92 1.43

→不良セルが多すぎます。修理不可能と判断しました。


1.92 1.97 2.03 2.00 1.90 1.99
2.04 1.73 2.03 1.84 1.99 2.01
1.96 1.83 1.98 1.99 2.02 1.99
1.91 1.95 1.94 1.93 0.58 2.00

→ひとつだけ不良セルがあることがわかります。このセルを交換しました。


2001年11月5日測定
1.84 1.80 1.86 1.74 1.75 1.70
1.87 1.78 1.83 1.74 1.77 1.70
1.77 1.76 1.84 1.75 1.76 1.70
1.67 1.44 1.69 1.57 1.77 1.83
2002年2月7日測定
1.83 1.73 1.86 1.79 1.77 1.77
1.89 1.74 1.85 1.86 1.74 1.76
1.80 1.75 1.85 1.81 1.72 1.81
1.69 1.69 1.78 0.91 1.79 1.85

→初回測定時は様子を見ました。後日行った再測定の結果、不良セルを交換することを決定。良好となりました。



当サイト内の掲載情報の無断転載は固くお断りします。(C)アワレイジ有限会社